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第328回談話会のお知らせ


コロナ禍の中、会員の皆様におかれましては日々御奮闘の事と拝察致します。
さて京都民俗学会では、2019年度に民俗学関係の修士論文を提出された大学院生の方々に
その成果を発表していただく修士論文報告会を開催いたします。
この企画は年度当初に開催をする予定でしたが、
新型コロナウイルス感染症拡大への対応から実施を見送ったもので、
今回改めてオンラインで実施させていただきます。
予定から数ヶ月が経ち年度当初にエントリーをいただいた大学院生の中には
諸般の事情から参加いただけない方もおられます。
ご希望を叶えられませんでした事を深くおわび申し上げます。
それでも今回は4名の方にご報告をいただきます。
斬新な研究成果の発表ですのでぜひともご参加下さい。
なお、今回の修士論文報告会は日本民俗学会との共同開催となります。


日時 2020年11月29日(日)13:25-16:30

開催方法 オンライン形式(zoom)

タイムテーブル
10:50-11:00	開会
13:25-13:30	趣旨説明
13:30-14:10	第1報告 渡 勇輝氏(佛教大学)
		「柳田国男と近代神道史〜「神道私見論争」と大正期の神道言説〜」

14:10-14:50	第2報告 舟木宏直氏(佛教大学)
		「二十日灸の民俗学的研究」

14:50-15:00	休憩

15:00-15:40	第3報告 大黒久美子氏(高知県立大学)
		「婚姻における若衆の役割と村落構造との関連についての研究
		 ―高知県宿毛市山奈町と高知県室戸市佐喜浜町を事例として―」

15:40-16:20	第4報告 石丸輔久氏(佛教大学)
		「神仏分離令と牛頭天王」

16:20-16:30	講評

報告要旨
第1報告 渡 勇輝氏(佛教大学)
「柳田国男と近代神道史〜「神道私見論争」と大正期の神道言説〜」
本報告は、柳田国男の「神道私見」の表明を明治期からの神道史のなかに位置づけ、
柳田の民間信仰研究の関心が、「国民生活」の解明が喫緊の課題とされるようになった
大正期の歴史的産物であったこと、また国民道徳論と密接に結びついていく
「神道」言説との緊張関係のなかから展開してきたことを明らかにする。
大正7年(1918)、当時貴族院書記官長であった柳田国男(1875-1962)は、
丁酉倫理会において「神道私見」なる論考を発表し、
その内容をめぐって当時国学院講師兼神職であった河野省三(1882-1963)と論争に発展した。
この論争については、先行研究で双方の見解が比較され、
柳田の言説が後の「柳田民俗学」と連続性をもつかどうか、
また柳田が「国家神道」批判にあたるかどうかという議論がなされてきた。
しかし近年の大正期研究の進展を踏まえれば、
この論争は国家神道対非国家神道という二項対立構造ではなく、
大正期における「国民」再編構想の相違として見ていく必要がある。
また、世紀転換期の宗教概念の変化についても問題提起がなされ、
かつ「民俗」や「神道」という概念そのものも明治後期から大正期にかけて
新たな展開をみせていることが明らかになるにあたって、
本論争は大正期固有の課題を担った、
「国民」理解の方途の衝突としての射程が得られるようになった。
とくに本報告では、柳田がこの時期になぜ
「神道」を主題にする必要があったのかという点に問題を設定し、
柳田と河野の両者が描く「神道」が、
「国民生活」の浅深そのものを問題としたことに注目する。
「神道」は明治10年代以来、公的には宗教的神道(「教派神道」)を
示す言葉とされており、政府は非宗教的神道を「神社」と公称していた。
しかし、対外戦争による戦勝祈願祭の展開によって、
明治後期に「神道」の再解釈が起こり、
「神道」は「国民思想」を体現するものとして認識されていくようになる。
神職である河野のみならず、柳田も「神道」を「国民生活」の問題として
取り上げていく背景には、このような「神道」言説の変遷が関わっており、
本報告ではこれを当時の神職系雑誌を参照することで
同時代的な問題を確認する。
こうした思想的土壌において「神道」の内容で対立した両者は、
異なる「国民」像を提示していく。
柳田がかたちづくっていく「民俗学」が、
いかなる言説と対峙しながら展開してきたのかを、同時代状況のなかから検討したい。


第2報告 舟木宏直氏(佛教大学)
「二十日灸の民俗学的研究」
これまで、灸の年中行事といえば2月2日と8月2日に行う
二日灸が中心に取り上げられてきた。
一方、灸の行事は1月20日にも認められるが、二日灸と混同され、
研究の主題に取り上げられてこなかった。
そこで、本研究は、1月20日に行われる二十日灸に関する調査・分析を行うこととした。
山形県新庄市、酒田市、最上郡最上町、西村山郡西川町の4市町村における
フィールドワークおよび文献資料中に認められる1月20日の灸の行事の記録から、
行事の呼称、分布、事例を集積した。
その結果、呼称として、日付に由来する「はつかキュウ」「エイト正月」、
灸をすえる行為に由来する「キュウタテビ」「キュウタテ」、
施灸時の介在物に由来する「カガチ灸」「皿キュウ」、などが認められた。
本研究では、二十日灸に統一して記載することとした。
また、行事は、東北地方、北関東地方、新潟県、島根県、鹿児島県奄美諸島に
広く分布していることが確認された。
方法は、皿やすり鉢を用いて行う地域が多く認められた。
また、施灸時に唱えごと唱え、家屋に対しても施灸を行うことが確認された。
1月20日は正月の終わりに位置し、新旧の年という時間的境界性を有する。
この時期は、小正月を中心に訪問者(神)が訪れる時期に位置している。
一方、二十日灸の方法を確認すると、
囲炉裏や戸口の敷居といった家屋に施灸する行為が認められる。
囲炉裏や戸口は家屋空間の境界に位置し、
疫神が家屋内に侵入する経路の1つである。
また、二十日灸に用いる艾作成のための蓬の採取は、
端午の節句に行われていた。
この日に採取された蓬は、陽気が強く、呪力の高い蓬である。
このことから、二十日灸は、端午の節句に採取された
呪力の高い蓬を燃焼させることで、時間的・空間的境界を通じて訪れる
悪神(疫神)の侵入を防衛する行為であると考えられた。
二十日灸の際の身体への施灸は、直接すえるのではなく
皿やすり鉢を介在物に用い、それらを頭上に頂き、
身体を煙で燻すことが主目的とされていた。
頭にものを冠する行為は、鍋被り葬などに認められる。
鍋被り葬は、ハンセン病や梅毒による死者に対して
病を断つことを目的として行われていた。
一方、朝鮮半島の鬼神信仰の疫鬼の調伏法や
我が国の瘧の治療の俗信に焙烙を用いた灸法が認められる。
このことから、二十日灸は、時間的・空間的境界から出入りする悪神、
特に疫病神に対する防衛・調伏行為であると考えられた。


第3報告 大黒久美子氏(高知県立大学)
「婚姻における若衆の役割と村落構造との関連についての研究
―高知県宿毛市山奈町と高知県室戸市佐喜浜町を事例として―」
本研究は、若衆が個人の婚姻に関与するか否に村落構造や
若衆の役割また権限の差異がどのような影響を与えているのかを
明らかにすることを目的とした。
高知県内の2つの地域の事例を分析考察した結果、
村内における若衆の最も重要な役割が権限にも強い関わりをみせ、
若衆の権限と家意識の強弱に相関性があることがわかり、
それらによって若衆が婚姻に関与するか否かが明確になることを立証した。
平地の農村で農業を生業とする宿毛市山奈町では、泊り屋は現存するが、
若衆組としての加入や制裁などは緩やかであった。
警防を最も重要な役割とした若衆は、村内の家意識の強さから
権限は与えられず、婚姻に関与できない。
さらに、恋愛から結婚へと進展させたい感情を抑え親が決めた相手と結婚する場合が多く、
村内の家意識の強さや家父長権が婚姻に影響を与えていた。
よって、家を継ぐ意の 「養子婚」事例が多い地域となった。
この地域の「養子婚」率29%は、通説である「嫁入婚」に反証する事例であり、新知見であった。
一方、海村の街であり半商半漁を生業とする室戸市佐喜浜町では、
祭りの伝承を最たる役割とする臨時的な若衆宿が栄え、加入や制裁は厳格であった。
若衆は、加入により得られる権利があることに加え、
祭りを伝承する過程で村内における権限を強くしていった。
よって、村内では家意識より若衆の権限が勝り、若衆は婚姻にも関与する。
さらに権限の強さは、村内に自由に恋愛結婚ができる土壌をもたらし、
のちの青年らの自由恋愛に対する意識の解放が早まるという影響を与えた。
ゆえに村内は、配偶者選択の自由のある「自由婚」が成立する地域となった。
先行研究は、若衆が発達する年齢階梯制村落は「相手選びに自主性がある」と述べているが、
配偶者選択の自由があるか否かにまで踏み込んだ実態を明らかにしていない。
そこで、配偶者選択の自由がある婚姻を「自由婚」と定義した上で調査分析し、
この地域が「自由婚」に該当する要因を、
祭りの伝承によって権限を強くした若衆が早熟であったことが影響を与え、
村内に自由恋愛から結婚に進展することを認める風土が形成された、とした。
若衆組が生業と直結していない地域で、若衆が強い権限を持ち
婚姻に関与できることを明らかにしたことは、新知見であった。
宿毛市山奈町の「養子婚」の多さと、
室戸市佐喜浜町が「自由婚」に該当する要因は、
地域独自性であるといえるだろう。


第4報告 石丸輔久氏(佛教大学)
「神仏分離令と牛頭天王」
本論文は、慶応4年(明治元年:1868)に公布された神仏分離令を、
そこで名指しにされた牛頭天王の検討を通して、
宗教史・思想史の文脈に位置付けたものである。
慶応4年(1868)3月、神仏分離令の一環として公布された「神祇事務局達」は、
牛頭天王を始めとする神号の変更を求めた。
そこで、なぜ牛頭天王が名指しにされたのかを検討した。
この頃の明治維新政府で神祇行政を担った神祇事務局では、
津和野藩出身の国学者である福羽美静らが中心を担い、
「神祇事務局達」を起草していた。福羽美静は法令の原案の段階や、
慶応3年(1867)の津和野藩での寺社整理の際の法令でも
牛頭天王や祇園の社号の変更を明記しており、
ここから、前近代に遡及して国学者達の牛頭天王に対する認識を確認した。
国学者達が問題視していたのは、牛頭天王がスサノオと習合し、
それらが同一のものと民衆の間で認識されていたことであった。
また牛頭天王は疫神としてみなされ、薬師如来の垂迹でもあるとされ、
衆生の病を癒すといった信仰を集めていた。
次第に、こうして牛頭天王は疫神として全国各地に広まっていく。
そして、牛頭天王のこうした習合状態を問題視する国学者たちの認識は、
在野の巫覡や民間の宗教者による病気平癒の祈祷や吉凶の卜占、卜筮
あるいは呪詛・呪術を、淫祀邪教として取り締まる動きと結びついていく。
その後、幕末、維新期を経て、その国学者たちやその思想は、
明治新政府における神祇行政を担った神祇事務局でもイニシアチブを握っていく。
「神祇事務局達」を起草した津和野藩の福羽美静らは、
法令を速やかに回達しており、それはまさしく、
この「神祇事務局達」に始まる神仏分離令によって、
近世の宗教秩序を解体させる意図があったからである。
つまり、神仏分離令は、民衆がいたずらに牛頭天王を
スサノオや薬師如来との同一視、在野の巫覡や民間の宗教者による呪術や卜筮、
迷信の類が蔓延していた状況を一新させるためのもの、
すなわち近世の宗教秩序を解体させるためのものと位置付けられる。
また、福羽美静らと政局上対立関係にあった、平田門人の矢野玄道らも、
この時点では神仏分離令を巡っては同様の認識を共有していた。
さらに、福羽美静は近世の宗教秩序を解体させたうえで、
新たな神道概念の創出を企図していた。
神祇祭祀を最優先事項として、淫祠邪教などの旧弊から脱すること、
こうした宗教秩序を解体した後に、天皇の神祇祭祀を中心に据える、
すなわち明治憲法に即応する、儀礼を中心とする非宗教の「神道」である。
つまり、神仏分離令とは、近世の宗教秩序の解体と、
新たな神道概念の創出を企図したものと、ここでは位置付けられる。


参加方法
参加希望者は、11月20日(金)までにWEBフォームからお申し込み下さい。
後日IDとパスワードをお送りします。
・参加者は原則として京都民俗学会会員のみとします。
・オンラインアプリはZOOMを使用します。なお参加希望者へのアプリ使用についてのサポートは行いません。

>>談話会の記録を見る

年次大会情報

第39回年次研究大会のお知らせ


・日時 2020年12月12日(土) 13時〜17時ごろ
・開催方法 オンラインによる

詳細の掲載までもう少々お待ちください。

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・一般参加歓迎。どなたでも自由にご参加下さい。申し込み不要。
・懇親会への参加も歓迎します。
>>年次大会の記録を見る

会員へのおしらせ

京都民俗学会第39回年次研究大会の報告者募集

謹啓

錦秋の候、会員各位におかれましては、
ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
平素は当会の活動にご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、京都民俗学会では、第39回年次研究大会の報告者を
下記の要領にて募集いたします。
報告に応募される会員の方は、10月23日(金)までに
応募フォームにアクセスしてフォームに必要事項をご記入ください。

なお、本年の年会は新型コロナウイルス感染症の拡大を予防するため
オンラインによって開催させていただきます。
その旨をご了解いただいた上で発表への応募につきましてご検討下さい。
会員諸氏の日頃の研究成果を公開し享受し合う機会として、
有意義な年会にしたいと存じます。
多くの方々の御応募をお待ちしております。

                                                                                                         謹言

           記

京都民俗学会第39回年次研究大会開催要項

・開催日時 2020年12月12日(土) 13時から17時頃まで
・報告時間 質疑応答含み1名あたり30分程度を予定
・開催方法 オンラインによる


公開:2020年10月04日
>>おしらせを見る
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