第333回談話会

日時 2021年6月28日(月)18:30-
開催形式 オンラインによる(zoom)

発表者 村田典生氏(佛教大学)

論題 「流行神―神仏の流行りと廃りについての考察―」

コメンテーター
村上紀夫氏(奈良大学)
岡本真生氏(園田学園女子大学)
参加方法
参加希望者は、6月20日(日)23:59までにWEBフォームから申請して下さい。後日IDとパスワードをお送りします。
・参加者は原則として京都民俗学会会員のみとします。
・オンラインアプリはzoomを使用します。なお参加希望者へのアプリ使用についてのサポートは行いません。
要旨
日本全国にはどのくらい神仏を祭る社祠寺院があるのだろうか。建築物としての社殿仏堂を始めとして、街角の祠、地蔵堂、神仏名が刻まれた石碑、塔婆等を加えると膨大な数にのぼることになろう。この国に住む人々はそれらに敬意を払いそして崇めてきた。
利生にすがり願掛けを行い、少しでも日々の暮らしの好転を希求するためにこれらに参詣した。そして人々の成就した願いや利生の即効性が口碑にのぼり、喧伝され他の人々の参詣が促進される。
こうした中である日突然参拝者が激増する神仏がある。昨日までは閑静だった境内に人々が群参する現象が出現することがある。それが「流行神」と呼ばれる現象である。「流行神」とはいうものの、それはカミだけに留まらず神仏全般を包含するものである。
今回はこのような「神仏の流行という事象」を「流行神(ハヤリガミ)」という言葉で表現する。
流行神を調査、検討していると人々の願掛けには多様な実態が存在していることが把握できる。それは本来の神仏の持つ利生とは必ずしも一致するものではないことも多々あり、経典や祝詞で定められたものではない利生も多数に上る。さらに神仏以外のモノにも願掛けを行っている。それはおもに生きているうちに叶えたい願いであり、生きているうちというよりもそれこそ明日にでも、今すぐにでもという即効性を希求しているのである。現世利益と称される利生の獲得を願っていることがわかるのである。
今回の発表では宮田登、鈴木岩弓の名をあげて流行神の研究史を紐解き、これまで蓄積された流行神の研究成果を概観し、そのうえでいくつかの事例を紹介していきたい。
発表者は現代の都市、そして都市近郊をフィールドとしているが、今回は研究の発端となった御金神社、近世の流行神である山科妙見、そして令和のコロナ禍で流行したアマビエを事例としたい。
御金神社の事例からは流行した神社とそれを取り囲む地域、参拝者との関係を見つめ、都市で勃興する流行神の利生の獲得とその需要の形成過程、そして地域との共生の模索と当該地域の流行神の受容について検討する。
山科妙見の事例からは開帳とそれによる流行神発生のプロセスと社寺運営を近世の流行の様子を紹介し、今年33年ぶり開帳となった同寺の動向を考察する。
アマビエの事例からは昨今のコロナ禍での流行の発生と今後の流行神の顕現について考えたい。
こうした具体的な事例をもって流行神にフォーカスした現代の民間信仰について考えてみたい。