第353回談話会

論題 近世京都の石造墓標―具足山立本寺墓地のフィールドワークを通して―
日時 2023年6月30日(金)18:30-21:00(予定)
開催 ウィングス京都 2階セミナー室A/オンライン(zoom)

報告 石神裕之氏(京都芸術大学)
コメンテーター 土居 浩氏(ものつくり大学)

報告要旨
京都市内の墓地では、数多くの近世紀年銘を有する石造墓標が認められる。しかし、現在そうした墓標は、改葬や石材劣化などの要因から、急速に消滅しつつある。報告者は、2021年より、具足山立本寺の墓地を対象として学生とともにフィールドワークを行い、銘文や石材などの調査とデータベース化を進めてきた。いまだ調査途上の段階であるが、フィールドワークで得た知見を紹介しつつ、京都の近世墓標研究の意義について改めて考えてみたい。
具足山立本寺(上京区七本松通仁和寺街道上がる一番町)は、日蓮の孫弟子、日像によって開基された妙顕寺を起源とし、四条櫛笥(下京区四条大宮付近)に位置した。その後、いくたびかの移転と寺名の改称を経て、文禄3年(1594)、豊臣秀吉の命により、寺町今出川に移転した。しかし、宝永5年(1708)に大火に遭い、現在地へ移転した。その際に墓地の改葬も行われたと言われている。
今回の調査は、京都芸術大学歴史遺産学科の授業の一環としてフィールドワークを行なっているものである。2005年にも同様の調査がなされており、その際の調査データをもとにした再調査となっている。今回は近世のみならず、1945年以前の近代墓標についても調査対象とし、形態、規模、銘文などの資料化を行なった。現在、把握し得た墓標数は769基で、破損や銘文の確認できない資料も含めて、ナンバリングを行なっている。
現段階の調査成果としては、石材使用に特徴(墓標竿石=砂岩、台石=花崗岩)が認められ、京都の墓標の典型的な石材の組み合わせであることを示唆している。また銘文では、墓誌を竿石側面や裏面に刻む墓標が多数存在し、その被葬者の多くが医家、儒家であり、学塾発展の地としての京都の特徴として評価することができる。くわえて、江戸や他地域とは異なる墓標の流行形態も認められている。 以上、京都の石造墓標がいかなる研究可能性を有しているか検討しつつ、これらの墓標の資料化や将来的継承へ向けた課題についても考えてみたい。

参加方法
・【対面】会場に直接お越しください。参加登録は不要です。非会員の方は受付で参加費300円を頂戴いたします。
・【オンライン】会員の方のみご参加を申し受けます。6月27日23:59までに会員あて告知メールに記載されている申し込みURLから申請して下さい。後日IDとパスワードをお送りします。オンラインアプリはzoomを使用します。なお参加希望者へのアプリ使用についてのサポートは行いません。