第345回談話会

論題 サケ・クジラ・ニシンをめぐる国際・民族的分業システム
   ―拙著『カナダにおける日本人水産移民の歴史地理学研究』を執筆して―
日時 2022年10月7日(金)18:30-21:00(予定)
開催 オンライン(zoom)

報告 河原典史氏(立命館大学文学部)
コメント 岡田浩樹氏(神戸大学国際文化学部)

報告要旨
これまで報告者は、若狭湾・瀬戸内海から対馬・壱岐、さらに朝鮮へ「漁民」の移動と、それにともなう転業について調査・研究を進めてきた。そして、2001年にバンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学日本研究所に客員研究員として赴き、第二次世界大戦前にカナダ西海岸へ渡って漁業に関わった日本人について歴史地理学的な視点から検討を重ねた。本書は既往論文に加え、新たに書き下ろした章節とともに構成されたものである。
本書で学界に説いたことは、①カナダ日本人移民史において、漁業だけでなく水産加工業や造船業など関連する他産業も含めた彼らを「水産移民」という枠組みで考察する。②歴史地理学からのアプローチを重視し、時間と空間のスケールに留意しながら、テーマに応じて「水産移民」をとらえる。空間スケールについては、出身地(送出地)と移住地(受容地)とを相互に考え、都道府県レベルではなく集落単位、さらにイエやヒトのスケールでも検討する。③陸上である漁村と海上の漁場とについて、相互補完的に考察する。その場合、他民族との国際的な分業システムによる居住地の住み分けについて大縮尺図から検討する。後者では時間スケールと関わった年周性や日周性から、漁場利用の生態を分析する。⑤かかるアプローチに対して、文献史学が活用してきた外務省の行政資料に留まらず、日本の農商務省やカナダ各地の文書館、ならびに個人家所蔵の資料、とりわけ古写真を積極的に活用する。これらの視点からの研究方法、そしてカナダ日本人「水産移民」の移動・転業と空間利用をめぐる国際・民族的分業システムのモデル図を構築した。
本報告では、報告者の近代漁業史研究を振りかえり、今後の課題を提起したい。

参加方法
・参加希望者は、10月4日(火)23:59までに会員あて告知メールに記載されている申し込みURLから申請して下さい。後日IDとパスワードをお送りします。
・参加者は原則として京都民俗学会会員のみとします。
・オンラインアプリはzoomを使用します。なお参加希望者へのアプリ使用についてのサポートは行いません。