第330回談話会(第12回卒業論文報告会)

日時 2021年3月6日(土)9:50-13:15
開催形式 オンラインによる(zoom)
共催  日本民俗学会
         
タイムテーブル
9:50-10:00 開会
10:00-10:30 第1報告 天野 みずき氏(京都産業大学文化学部)
         「創作ダンス「京炎そでふれ!」 とは何か
          ―コロナ禍のヒアリングを通してよさこいとの比較を図る―」
10:35-11:05 第2報告 青木 瑠夏氏(佛教大学 歴史学部)
         「ヌエ伝承の考察―静岡県三ヶ日の事例をめぐって―」
11:10-11:40 第3報告 嵐 真穂氏(佛教大学 歴史学部)
         「十三参りの成立と変遷」
11:40-11:50 休憩《10分間》
11:50-12:20 第4報告 堀口 裕哉氏(関西学院大学社会学部)
         「位山信仰の研究―岐阜県高山市の聖地をめぐって―」
12:25-12:55 第5報告 福澤 光稀氏(東北学院大学文学部)
         「蔵王信仰と花笠まつり」
12:55-13:10 講評
13:10-13:15 終了
*    各報告時間は20分間、質疑応答は10分間

報告要旨
第1報告 天野 みずき氏(京都産業大学文化学部)
「創作ダンス「京炎そでふれ!」とは何か―コロナ禍のヒアリングを通してよさこいとの比較を図る―」
 本報告は、京都学生祭典に際して演じられる創作おどり「京炎そでふれ!」について、よさこい/YOSAKOI ソーランとの比較と、コロナ禍の対応をみることで、その特質を明らかにすることを目的とする。2020 年、新型コロナウイルス/COVID-19 による全国的な祭礼行事中止の波は、当然京都学生祭典にも波及した。祭典をどうするかの議論は、「京炎そでふれ!」関係組織にとっても初めての経験であった。報告者はそれらを記録することに意義があると考え、ホストチームや祭り主催である京都学生祭典実行委員及び大学コンソーシアム京都の職員へのヒアリングを行った。コロナ禍において取られた行動を記録し、その対応から組織的な特徴や、学生祭典の性格を読み取ろうと試みた。最初に「京炎そでふれ!」やその成り立ちに関係する京都学生祭典の概要をまとめ、その後内田忠賢論文を参考によさこいの歴史と特徴を記した。そこで整理した「京炎そでふれ!」とよさこいの同異点にホストチームへのヒアリングを加味して分析を進めた。その結果、「京炎そでふれ!」に所属するチーム間で交流があり、影響を及ぼし合っていることが分かった。またオンライン開催に際した祭り参加側の意識は「発信」よりも「自分たちの楽しさ」を重要視していることが読み取られた。またコロナ禍における祭り主催側の対応を記録することで、オンライン化によって主催側と地域・協賛企業との関係性が変化していく可能性を示唆した。


第2報告 青木 瑠夏氏(佛教大学 歴史学部)
ヌエ伝承の考察―静岡県三ヶ日の事例をめぐって―」
 ヌエといえば、平安末期の武将・源頼政が倒したことで有名で、頭がサル、胴体がタヌキ、尾はヘビ、手足がトラの姿をしている奇妙な妖怪、というのが世間一般的なイメージだろうか。しかしヌエとは、初めから妖怪であったわけではない。先行研究ではヌエがどのような経緯をもって妖怪として認識されるようになったのかが明らかになっている。
 そんなヌエの伝承が伝わる地は、京都を中心に様々な場所にみられる。本論文では、平家物語のヌエ退治説話に謳われる京都を含めた近畿の伝承に加え、京都から離れた静岡県三ヶ日町に特に焦点を当てた。この地にはどのような伝承が伝わっているのか、またなぜその地に伝わっているのかを明らかにするため、実際に各地を訪れフィールドワークを行った。その結果、先行研究ではみられない、大阪市都島区の「鵺まつり」の存在や、三ヶ日町におけるヌエを鎮魂する鳥居の有無等を明らかにすることができた。


 第3報告 嵐 真穂氏(佛教大学 歴史学部)
「十三参りの成立と変遷」
 本卒業論文は、京都の成人儀礼として代表される十三参りの成立と発展の歴史と、その伝播について明らかにするものである。十三参りの起源とされている嵐山法輪寺の十三参りと、そこから派生したと考えられる京田辺市大住の両讃寺で行われている十三参りに焦点を当てた。佐野賢治の『虚空蔵菩薩信仰の研究-日本的仏教受容と仏教民俗学―』、および中村雅俊の『虚空蔵信仰の研究』に依拠しつつ、両讃寺御住職への聞き取り調査と大住村史を中心に、法輪寺十三参りと両讃寺十三参を比較することで、京都における十三参りの成立と変遷について考察した。その結果、京都における十三参りの成立は、法輪寺十三参りが始まったとされる1760年から1773年の間であり、その後、大住村で独自に行われていた成人儀礼や虚空蔵講の行事に、法輪寺の十三参りが影響を与え、その結果両讃寺十三参りが成立したと結論づけた。


第4報告 堀口 裕哉氏(関西学院大学社会学部)
「位山信仰の研究―岐阜県高山市の聖地をめぐって―」
 本研究は、岐阜県高山市に位置する位山及びその周辺地域にて実地調査を行うことにより、位山を中心に展開されている重層的な信仰のあり方を分析し、聖地としての側面を持つ位山が、今日に至るまでどのように信仰され意味付けされてきたのかを明らかにしたものである。
 岐阜県高山市一之宮町に位置する位山は元来、水を司る神である水無大神を祀る飛騨一宮水無神社の御神体として祀られている他、山に現存するイチイの木が歴代の天皇即位の際に献上される笏として使われているなど、古くから様々な形で信仰されてきた山である。
 位山では昭和初期から多数の新たな信仰が発生し、現在は「パワースポット」として扱われている。これらの信仰に土着の信仰である飛騨一宮水無神社は中立な姿勢を取っている一方、観光協会などの一之宮町の一部の人々は位山のパワースポットとしてのイメージを利用した観光化を試みており、伝統的な信仰の維持と観光化の2つの側面が窺える。


第5報告 福澤 光稀氏(東北学院大学文学部)
「蔵王信仰と花笠まつり」
 本論は、かつて蔵王信仰において登拝口の1つであった山形市下宝沢地区の苅田嶺神社において、蔵王権現を祭神とした山形花笠まつり(以下、花笠まつり)の前夜祭が行われていることに着目し、この行事と蔵王信仰との関係性を検討しようとしたものである。
 花笠まつりの成立過程をみると蔵王観光の推進などを主な目的として開催されたもので、蔵王信仰の流れを汲んだものとは言えない。また、蔵王の歴史的変遷を見ていくと、近代以降にかつての信仰の山といった性格が衰退し、観光の山という性格が強まるといった転換が起きたことがわかった。
 以上の考察から花笠まつりは蔵王信仰の一環ではなく、観光を主体に信仰を取り込んだ行事であった。しかし、その前夜祭においては、蔵王信仰の宗教的拠点で蔵王権現を祀り、苅田嶺神社の氏子等を中心とした保存会が主体となることから、観光化に合わせた現代の蔵王信仰のあり方としても検討していく必要性も最後に指摘した。